ABC光半導体

ABC光半導体とは

ABC光半導体とは、銀ナノ粒子(Ag)・ボロン樹脂(Boron)・クレイ(Clay)を合成した新規の光半導体です。3種の物質同士が互いに吸着し合う性質を利用して、水-有機界面に濃縮膜を形成する現象を利用して一体成型した膜です。

ABC光半導体はフレキシブル膜や曲面に、簡単に塗布することを念頭に考案したもので、溶液プロセスを基本としています。一般的な固体半導体とは異なり、真空や高温を必要としません。

Agナノ粒子に光を照射すると電子が集団的に振動して、振動に共鳴したエネルギーの波長を散乱・吸収し、さらには表面に極めて高い電界強度が発生します(表面プラズモン共鳴)。分析関係では、この高い電界強度が分子振動の微弱な信号を増強することが(表面増強ラマン散乱 : SERS)、医療関係では、非接触でも抗菌作用があることが実験的に確かめられています。

ボロンはBNのイオン液体の形で用いますが、BNは半導体の性質をもつため、Agの表面プラズモンエネルギーをBまたは他の物質に遷移させることを視野に入れると、電子デバイスとして応用の幅が広がります。

クレイはAgとボロンを結びつけるために好適な材料です。クレイはよく知られた「粘土」であり、マイナスを帯びた極薄膜(~1nm)が積層されたものであり、その間に電荷の中性を保つためにプラスのイオンが挟まっています。このプラスのイオンとイオン交換することで、親油性にも親水性にもなります。イオン液体のBNがこのクレイの層間に上手く結合するのです。ABC光半導体の構造としては、AgをクレイとBNが取り巻いた1図の様に推測しています。プラズモン特有の色を呈するのも特徴です。

ABCの推定構造

一方、ABCは電気的には良導体,半導体,絶縁体に分類されていますが、配合組成により様々な電気特性を演出することができます。その過程で我々が見出したのはプラズモンの吸収に応じて3図に示した光電流が生じることです。つまり、新規な光半導体が生まれたわけで、様々な分野での応用が考えられます。プラズモン共鳴に依る銀表面の光振動電場が銀-ボロン樹脂界面のショトキー障壁を電子が超えることを増長して光電流が得られると解釈しています。

現在は、この現象を用いてフィルム状フォトダイオードにて有害細菌等を死滅させることを検討しており、JISに準拠した方法で公的機関での検証にて成果が得られています。
赤外光での検討も進めており、この新技術を駆使すると先行する二酸化チタン系が苦手とする波長光での殺菌達成の可能性もあると考えています。
学会発表の場で順次、公表の予定です。

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