SERS用基板

SPRあるいはLSPRを発現させる目的で基板上に金属ナノ構造体を作製する場合、一般的には、蒸着やエッチング,リソグラフィー等の物理的な加工法が用いられています。

これに対して、伊都研究所では、煩雑で高コストな製法に頼ることなく、LSPRが保持された状態で、水中に分散している任意のサイズのAgPLを基板(例えば、ガラス)上に簡便に固定させることができます(特許第6080233号)。

一例として、市販のスライドガラスを用いて、スポット状にAgPLを固定したものを示します(写真1基板1、2)。

固定されたAgPLは、水分散液中ではそれぞれ519nmと804nmにLSPRの極大吸収を有していました(図1)。

一方、固定後のAgPLスポットのスペクトルでは、基板1は520nmに、基板2は738nmにそれぞれ極大吸収が存在しています(図2)。

これらのAgPL固定ガラス基板をラマン散乱測定に用いたところ、表面増強ラマン散乱(SERS: Surface Enhanced Raman Scattering)が認められました(図3および測定条件は下記)。

図2の基板1,2のいずれの極大吸収も、水分散液中と比較して長波長側にテーリングしていることが分かります。これは、一部のAgPLが凝集していることを示唆します。

LSPRにより誘起されるAgPL近傍の強い電場は、近接する二つのAgPL間でさらに増強されることから、本基板はAgPLの適度な凝集により、SERSにとって都合の良い電場増強サイトが提供できているようです。また、このSERSの結果から、本基板は蛍光増強にもそのまま転用できると思われます。

上記のSERSが発現した基板は、写真1の通り、直径5mm程度のスポット状にAgPLを固定したものでした。

伊都研究所の製法は非常にシンプルで、まずは基板上に特殊な無機-有機複合化合物を含む「下塗層」を設け、それをAgPL水分散液中に浸漬させることでAgPLを付着/固定しています。

つまり、「下塗層」さえあれば、基板全面はもちろん(ガラス基板で5 inch□の実績あり)、パターニング通りにAgPLを固定することができます。

本SERS用基板については、測定データを追加し、2016年9月に浜松で開催された
「The 14th International Conference of Near-Field Optics, Nanophotonics and Related Techniques (NFO-14)」において発表を行いました。

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